3月6日に発売されたnaomi & goroのアルバム『CAFÉ BLEU SOLID BOND』。その内容は、UKロックの重鎮ポール・ウェラー氏が80年代に結成したユニットThe Style Councilのファーストアルバム『CAFÉ BLEU』の丸ごとフルカバー、プラス、ボーナストラックとして、同作の代表曲「My Ever Changing Moods」がバンドで演奏されたシングルバージョンとウェラー氏がThe Style Council結成前に在籍したパンク/モッズバンド「The Jam」のバラード曲「English Rose」のカバーを収録した全15曲である。アルバム1枚を丸ごとカバーするという前代未聞(?)の作品をリリースしたnaomi & goroが5月19日、そのレコーディング・メンバーとともにビルボードライブ東京にて『CAFÉ BLEU SOLID BOND(以下、CBSB)』を全曲、曲順どおりに演奏するというライブを行った。

 

CBSBの発売を記念し、「The Style CouncilのCAFÉ BLEUといえば・・・ステンカラーコートと新聞!」ということで、naomi & goroも『The CBSB Journal』という表が新聞記事、裏面がポスターというジャーナル(新聞)を発行している。このジャーナルのディレクションを務めた青野賢一(BEAMS RECORDS)が開演前のDJを担当。ショーの始まりまでの時間を淡々と心地よい音楽で満たしていく。

 

 

そして、いよいよ開演時間となり、暗転。場内にイタリアン・スクーター「ランブレッタ」のエンジン音が鳴り響く。スポットライトに照らされて現れたのは、naomi & goroのギタリスト、伊藤ゴローただ一人。ハイハットのビートに合わせ、ゴローがギターで軽快なリズムを刻む。ジョアン・ジルベルトの「Na Baixa Do Sapateiro」を彷彿させる曲へと姿を変えた1曲目「Mick’s Blessings」は、ショーの始まりを告げた。

心地よい緊張感のまま、2曲目のイントロへ。歌声とともに現れたのは、ヴォーカル布施尚美。文字通りnaomi & goroの二人が揃い、原曲でもギターとヴォーカルだけで演奏されている「The Whole Point of No Return」がしっとりと進行していく。

 

    

 

2曲目の終わったところで、レコーディングのメンバーでもあり、今回のライブのメンバーでもあるバンドの面々が、各々の位置へと着き、尚美は彼らにパフォーマンスをバトンタッチ。このライブのお客様だけが正体を知ることができる謎のコーラス隊Tangent Grafikasのコーラスが印象的で、どこまでもクールなインストゥルメンタル・ナンバー「Me Ship Came In!」へ。

続いて4曲目は「Blue Café」。ヴァイオリンが加わり、前曲とは打って変わって、ヴァイオリンとギターを中心としたスムースでメロウなインストゥルメンタル・ナンバーである。

 

   

 

2曲を演奏後、尚美がステージ上に戻り、原曲ではEverything But the Girlのヴォーカル、トレーシー・ソーンがうたう「The Paris Match」が流麗に始まる。CBSBでは、普段ボサノヴァでは行わないような歌い方を要する曲が多かった中、尚美が最も素でうたうことのできたという曲だ。

そして、次曲との間にトークコーナーを挟み、尚美からゴローへ「The Style CouncilのアルバムCAFÉ BLEUのフルカバーをなぜ、作ろうと思ったんでしょうか?」というお決まりの質問が。「よく訊かれるんですけれども、単純に好きなアルバムでした・・・というわけにもいかず・・・色々(理由を)言っています」と苦笑。

次の曲はいよいよ『CAFÉ BLEU』の代表曲「My Ever Changing Moods」。ここでは、アルバムに収録されているバージョンに則り、ピアノとギターとヴォーカルというミニマル編成で演奏。

 

 

6曲を披露し終え、気になるバンドメンバーは・・・ということで、尚美がメンバーを一人ずつステージに呼び込み、紹介していく。ピアノに菊地成孔氏のDCPRGやDub Septet、エレクトロ・ジャズユニット東京ザヴィヌルバッハで活躍する坪口昌恭、ベースにSOIL&”PIMP”SESSIONSの秋田ゴールドマン、同じくSOIL&”PIMP”SESSIONSのみどりんをドラムに迎え、ホーンセクションには、トランペット/フリューゲルホルンに織田祐亮、サックスに鈴木広志、最後にヴァイオリンの伊藤彩という編成。

そして、音の粒がだんだん増していって爆発するようなみどりんのドラムソロパフォーマンスから、エキサイティングなインストゥルメンタル・ナンバー「Dropping Bombs on the Whitehouse」へ。全員が熱を持ってヒートアップしていき、あっという間に終焉を迎える。

再び、尚美がステージに戻り、本人曰く「今日の一番の難関」であるラップをフィーチャーした「A Gospel」が始まる。静かにリリックが紡がれていく中、それまでブルーだったライトが紅く変わる瞬間、曲の雰囲気もがらりと変わる。

そして、そのまま9曲目「Strength of Your Nature」へ。原曲では、とにかく派手な2曲だが、naomi & goroのカバーによって、こんなにもクールで、アーバンな曲に変わるなんて、誰が想像できただろうか。naomi & goroのアレンジ・センスが光る。

 

 

2曲を続けて披露した後、ステージ上にはnaomi & goroの二人だけが残り、「You’re the Best Thing」へ。この曲は、これまでのnaomi & goroのサウンドとは異なり、プログラミングを導入したサウンドが印象的だ。

続いて、フリューゲルホルンをフィーチャーし、ゴロー曰く「牧歌的」な曲にアレンジされた「Here’s One that Got Away」がゆったりと進んでいく。

 

   

 

そして、フルメンバーがステージに再び揃ったかと思いきや、尚美からこんなアナウンスが・・・実は、次に演奏する「Headstart for Happiness」では、ゲストミュージシャンにWack Wack Rhythm Bandの山下洋を招いていたが、残念ながら、怪我のために出演できなくなったという。
山下の自宅からの応援(笑)を受け、「Headstart for Happiness」は爽快に「Council Meetin’」へと向かっていく。

『CAFÉ BLEU』の最後に収録されている「Councili Meetin’」は最後を飾るに相応しいナンバーだ。演奏中、メンバー紹介とそれぞれのソロを挟み、『CAFÉ BLEU』は、本当にあっという間に最後を迎えた。

 

 

冒頭にも述べたが、『CAFÉ BLEU SOLID BOND』にはボーナストラックが2曲収録されている。その2曲がまだ演奏されていない・・・ということは、それが「アンコール」の曲となることを示唆している。

 

naomi & goroと、公演の最後に今回のバンド名が明らかになったCAFÉ BLEU SOLID BONDならぬ<SOLID BAND>の面々がステージへと上がる。
期待通り、「My Ever Changing Moods」のバンドバージョンとnaomi & goroの二人だけで「English Rose」が披露される。「English Rose」の演奏中、ステージ背面のカーテンがゆっくりと開き、雨の降る東京ミッドタウンの夜景が現れ、その歌をさらに幻想的に彩る。

そして、CBSB全15曲が終了。2ndステージでは、アンコールの最後にボサノヴァのスタンダードナンバー「イパネマの娘」をメンバー全員で演奏。こうして、最後はnaomi & goroらしくボサノヴァでラストを締めくくるという心憎い演出で、CAFÉ BLEU SOLID BOND LIVEというnaomi & goroの発信する豊かな音楽に満ちた一夜限りの贅沢なショーは、幕を閉じた。

 

 

 

naomi & goro with SOLID BAND
布施尚美(Vo)
伊藤ゴロー(G)

 

坪口昌恭(Pf/東京ザヴィヌルバッハ)
秋田ゴールドマン(B/SOIL&”PIMP”SESSIONS)
みどりん(Dr/SOIL&”PIMP”SESSIONS)
鈴木広志(Sax)
織田祐亮(Tp)
伊藤彩(Vn)

 

青野賢一(DJ/BEAMS RECORDS)

 

Photo by Kentaro Minami

 

 

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